ダージリン・ファーストフラッシュ
「ファーストフラッシュ」とはその年の最初の芽吹きのこと。冬の間に養分を蓄えた茶樹から一斉に芽吹く茶葉で作られる、紅茶ファン待望の季節です。
インド北部の茶産地は冬の間に気温が下がるため、茶樹の地表の活動が止まり、芽が出ない休眠期があります。その後、2月の後半から3月頃にかけて春を迎えて徐々に気温が上がってくると、標高の低いところや気温が上がりやすい地区から順に芽吹き始めます。そのときに作られるのが「ファーストフラッシュ」です「フラッシュ」とは一斉に芽吹く様子を意味します。
ファーストフラッシュは3月から4月が最盛期。この時期は特に夜間には冷え込むことが多く、発酵が進みにくいことから軽発酵のお茶が多く作られます。
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ダージリンの茶園
ダージリンの茶業は19世紀中頃にイギリス人によってはじめられ、のちにベンガル人をはじめとした資本家に受け継がれました。茶園のオーナー企業の多くはビジネスの中心地コルカタにあり、一つの会社がいくつかの茶園を所有しています。
個々の茶園の運営には、現在でも英国統治時代にはじめられたプランテーション方式がそのまま踏襲されています。茶園が一つの「村」のような存在で、働く人は茶園の敷地内に住居を構え、同じ茶園内に医療所や学校などの施設もあります。
プランテーション方式の茶園で作られる紅茶は、トップであるマネージャーの知識や経験、統率力などの力量によるところが大きく、マネージャーが変わるとその茶園の味が大きく変わることがあります。また近年はマネージャーの世代交代に伴い、アドバイザーとして経験豊富な元マネージャーなどが就任しているケースも多くみられます。このアドバイザーの存在も茶園の味を左右する大きな役割を担っています。
マネージャーをはじめとした茶園の管理者層には、ベンガルやビハール、UPなど、ダージリン以外のインド北部出身の農業を学んだ人たちが就任することが多いようです。
一方、茶園の労働者の多くはネパール系です。現地に行くと、茶園の管理者と労働者との顔立ちが違うのがわかります。19世紀中頃にイギリス人がこの地で茶業をはじめる際に、労働力として多くのネパール人を移住させました。現在でもダージリンでは日常的にネパール語が使われています。
こうした構造を背景に、ダージリンではゴルカランド州独立運動があり、茶園経営の問題の一つにもなっています。